泣いてしまいそうだ。

だけどきっと、今はまだ泣くときじゃないから、それを必死で呑み込んで。


その代わりに、大好きなきみへ、最高の笑顔を見せよう。



「夏海、もうすぐ海に着くかな」


きみが言う。

サドルの後ろに、ひとり分の重みが増える。

ふたりを背負った自転車は、思うようには進まない。

だけどこれで丁度良い。


「うん、あと、ちょっと」


わたしは強く、ペダルを踏み込む。

徐々に動き出す車輪。


少しずつ近づく、わたしたちの目指す場所。




もう一度、始めよう。


そして今度こそ、きみに見せてあげよう。



青い青い、どこまでも続く、海を───