───冷房の効いた車の中。
わたしはお父さんとふたり、昨日帰って来たはずの道を進んでいた。
太陽はどんどんとその高度を下げていく。
家を出てから、数時間が過ぎていた。
「お父さん、ごめんね。せっかく休んだのにまたこんな長旅させちゃって」
「いいんだ、別に。たまにはこういう休みもいいだろ」
隣にいるお父さんに視線だけ向ければ、お父さんはわたしを見ないまま少しだけ唇の端を持ち上げた。
とっくに街並みは知らないものになっている。
でも、確かに昨日通ったことがあるような、懐かしい道のり。
「……まあ、そうだね」
覚えている限り、お父さんとドライブなんてしたことがない。
わたしはもう、こんなことで喜ぶような歳でもないけれど。
確かに、たまになら、いいのかもしれない。