部屋から出ると、まずシャワーを浴び、それから朝ごはん兼昼ごはんとして食パンを焼いた。

それを食べながら静かなリビングに座り、何の気なしに庭を見る。

そこには、古びたわたしの自転車があった。


食パンの最後のひと欠片を、冷たいミルクティーで喉の奥に流し込む。

そして立ち上がり、綺麗な雑巾を1枚持って、庭に出た。



庭には、花壇もないのに何のためにあるのか、3メートルほどのホースがある。

それを蛇口に取り付け水を出すと、そのまま蛇口の先を自転車に向けた。

虹色の流水は、弧を描きながら自転車を濡らしていき、砂ぼこりに塗れた自転車は、少しずつ本来の色を取り戻していった。


ただホースを持っているだけなのに、額からは汗が滲む。

だけど、弾ける水飛沫が、少しだけ夏の暑さを和らげてくれているような気がした。