……もしかしてわたしは、ひどく勘違いをしていたのかもしれない。
誰も自分を見てくれない、誰も愛してくれない。
そんなことばかり考えて、いつだって自分から誰かを見ようとはしなかった。
本当は、いつだって。
わたしは確かに、大きな優しさに、包まれていたのに───
ぽたんと、手の甲に、大きなしずくがひとつ、落ちた。
「……お父さん、わかりにくすぎるよ、それ。ほぼ放ってるようなもんじゃん」
「え、そんなつもりはないんだけどなあ……子育てってのは難しいからな、まだいまいちコツが掴めないんだよな」
本当に困ったようにお父さんが言うから、わたしはつい笑ってしまう。
そして、濡れた手の甲で涙を拭い、勢いよく鼻を啜った。
「うん、知ってる」
「なんだ、ばれてたのか」
当たり前、だってわたしたちは、ずっとずっと長い間、一緒に生きてきたんだから。
そしてきっと、これからも。