お父さんの視線はすぐにわたしから外れて、浮かべた笑顔もあっという間に消えてしまって。

今わたしの目の前にいるのは、いつもどおりのお父さんの姿。


だけど、わたしを見たのも、笑ったのも、優しい声も、ぜんぶぜんぶ本当で。


ぶわっと視界が滲むのがわかって、わたしは急いで顔を伏せた。


そんなわたしに気付いていないのか、それとも気付いているけどいない振りをしてるのか。

お父さんはわたしの隣で、静かに言葉を続ける。



「父さんはなかなか夏海のために時間を割いてやれないから、せめてお前がやりたいと思うことは、口出しせず、見守ってやりたいんだ。

だからお前は、自分が思うことを好きなようにすればいい」


危ないことじゃなければな、とお父さんは呟き、そしてもう一度、小さく笑った。