目を開ければ、そこにはわたしを見下ろすお父さんの姿があって。

それはいつもと同じ、感情の見えないような無表情で。

笑いかけることもなくて、何を考えているのかわからなくて。


だけどわたしに触れる手は確かに温かくて。

わたしの名前を呼ぶ声は、どこか優しげに響いて。


もう、ひとりじゃないような気がして。



わたしはなんだか、涙が出そうになった。



「……うん」


顔を隠すように俯いて答えると、お父さんはもうひとつ、わたしの頭を撫でた。



そしてわたしは朗には会えないまま、その街を、後にした。