わたしはそのとき、どんな顔をしていただろう。

きっと、ものすごく驚いた顔をしていたに違いない。

驚いたのはわたしだけで、他の人にはごく当たり前のことだったのかもしれないけれど。


でも、だって、本当にそれは、思いもよらないことだったから。



「お父さんが来てくれたから、もう帰ってもいいからね」


後藤さんが、まるで小さな子どもに接するみたいにわたしに笑ってくれるけれど。

わたしはそれに返事はせず、ただじっと、後藤さんが連れてきたその人を見つめていた。


いつものスーツ姿。

会社で仕事を終え、そのまま遠くのこの街へやって来たのだろう。


表情を少しも変えないまま、同じように、わたしを見つめる、お父さん───