「夏海ちゃん、大丈夫?」 ノックの音が響いたあと、開いたドアの隙間から後藤さんが顔を覗かせ、わたしを呼んだ。 わたしはそれに小さく頷いて、立ち上がる。 部屋から出て廊下を軽く見渡したけれど、もうそこに、朗の父親の姿はなかった。 目の前の窓の向こうでは、まだ、真夏の夜の雨が、降り続いていた。 ───朗 わたしはどうしたらいいかな。 本当は何が、きみのためになるんだろう。 止まない雨はないように、 晴れ続ける、空もない。