長く生きられるのなら、その方がいいに決まってる。
どれだけ長い人生だって、足りないくらいの時間だから。
だけど、何よりも大事なのは、長く生きたかどうかじゃない。
ただ生きているだけの時間には、きっと何の意味もないから。
それは死んでいるのと同じで、この世界になんの彩りも与えてはくれないから。
だから、たとえ残りの時間が縮んでも、朗はひとりの人間として、自分のやりたいことを、してみたかったんだと思う。
自分の思うままに。
心の望む方へ。
小さな頃からずっと、何も出来なかった、知れなかった、見ることができなかった。
だから朗は、あと僅かになってしまった自分の命が完全に消えてしまう前に、思うままに、生きてみようとしたんだろう。
きっと、朗は知っていたんだ。
その命が、なんのためにあるのかを。
呼吸をするためじゃない、脈を打つためじゃない。
いつだって大切にしなきゃいけないのは。
充実して、楽しくて。
二度と取り戻すことの出来ない、きらきらと輝いた、宝物みたいな“今”。