目を見張る朗の父親と、初めてきちんと向き合った。
濃い瞳はやはり、どこか、朗を思い出させる。
「生きたいからって……こんな無茶な事をしては、死を早めるだけだ!」
眉を寄せ、荒らげられた声は狭い室内に轟いて消える。
誰かを責めて、だってそうでなければ、きっと、自分を赦すことができないから。
「……確かに、そうかもしれません」
わたしは、溢れそうになるものを喉の奥に呑み込み、きつく拳を握りしめる。
「……だったら、どうして……」
「朗は、きっと、長く生きていたいわけじゃないんです」
朗がそう言っていたわけではない。
でも、この短い間、だけどずっと一緒にいた間、彼を見ていたら、わかる。
自転車が動いただけで喜んで、見慣れた街の風景を楽しんで。
どうしてもアイスが食べたくて、出会った人を、忘れたくなくて。
呆れるくらいに何も知らなくて、子供みたいな世界の見方をして。
いつだって遠い海に憧れて、どんなに長い道のりでも、そこを目指し続けた。