ある言葉を思い出す。

いつだったか、それはずっと遠い日のことのようにも思えるけれど、だけど、たった数時間前のことだ。


青空の下で、朗が言っていた言葉。



『終わらないものなんて、ないんだ』


確か、なかなか海に着かないことを嘆いていたわたしに、宥めるように言った言葉だったっけ。

だけどわたしはその言葉に、理由のない違和感を感じていた。

あのときは、その違和感の原因がなんなのかさっぱりわからなかったけど。



───ああ、そうだったんだ。


朗はあの言葉を、わたしに向けて言ったんじゃなかったんだ。


自分に向けて言っていたんだ。



終わらないものなんてない。

そう、それは、わたしたちの短い旅のことじゃない。


彼自身の、いや、すべてのものの、命のこと───