何も言葉は出なかった。
呼吸の仕方すら忘れていて、だけど心臓は確かに鼓動を刻んでて。
邪魔なその音の向こうで、どこか遠くから届く朗の父親の声が、聞こえていた。
「生まれたときから、少しだけ標準よりも体温が低い子だったんだ。本当に少しだから、それだけなら問題はなかったが、でも念のため、精密検査をしてもらった。
そこで、5歳のときだったかな、わかったんだ。あの子の体温は少し低いだけじゃなく、何年も何年も時間を掛けて、でも確実に、下がり続けていくのだと。
急激に下がってしまうことはないようだから、最初は、普通に生活していく上では問題ないように思えた。
だけど医者に言われたんだ。このままだと、あの子は、成人になる前に命を落とすと」
朗の父親は、そこで一旦言葉を区切り、深く息を吐いた。
過去を思うように、きつく瞼は閉じられて。