ふたりだけになってしまった空間に、重い沈黙が流れる。

小さな物音すら聞こえなくて、自分の呼吸の音をやけに意識してしまった。


ちらりと、上目で朗の父親を窺う。

彼も唇を結んだまま、ただじっとわたしを見つめていた。



年相応の皺は目立つが、整った端整な顔立ちをしている。

朗は父親似みたいだ、そんなことを思い、目を伏せた。

沈黙に耐えきれなかったし、なにより面影のあるその顔を、真っ直ぐに見ていることができなかった。



だけどそれは、わたしが視線を逸らすのと同時で。


「あの子に、同じ学校の友達がいるとは知らなかった」



低く、微かにしわがれたその声に、わたしはもう一度顔を上げた。

朗の父親が、わたしを視界に捉えたまま、僅かに眉をひそめる。


「あなたはいつからあの子のことを?」


知っていたのか、そう訊きたいのだろう。

ずくずくと、胸の奥で鈍く鼓動が鳴っている。


「昨日です」


こくりと唾を呑み込んで、わたしは短く答えた。