信じられない。
普通こういうのって、男の子が受け止めるものなんじゃないのか。
なんでわたしが心の準備すら出来ないまま、見ず知らずの男の下敷きにならなければいけないんだ。
「だって、梯子を使うのは面倒だし、だからってコンクリートに飛び降りたら、きっと俺大けがする」
今なら殺人犯しても、許される気がするんだけどどうだろう。
だけど少年はそんなわたしの思いには毛ほども気付かずに、掴んだままだったわたしの手を、さらにきつく握る。
「藤原 朗(フジワラ ロウ)」
風に前髪を揺らし、少年はゆったりと呟いた。
ぽかんと口を開けたまま呆けるわたしを見て、少年は軽く目を細めながら、楽しげに笑う。
「俺の名前。お前は?」