「……朗」


知っているはずでしょ。

わたしが今、生きているのは。


ぜんぶぜんぶ、きみのため。



きみは言ったよね。

わたしのために、自分が出来るすべてのことをしてあげたいって。


わたしもだよ。

わたしも、きみのために、わたしが出来るすべてのことをしてあげたいって思う。


自転車で山だって登るし、道も知らない海にも行くし、明日を生きることだって出来る。


ほら、見てよ、朗。


わたしの心臓、まだ動いてる。



『お前の命、俺にくれない?』



あげるよ、いくらでも。


ううん、もう、あげてるんだ、きっと。


この心臓はきみのため、この命はきみのため。


きみと一緒に、生きるため。




ねえ、聞こえてる、朗──……



「……会いたいよ」


小さな呟きは、わたしの耳にしか、届かない。