後藤さんは、わたしを見下ろしたまま小さく息を吐くと、そっとその場を離れていった。

わたしは消えていく足音だけを聞きながら、零れる何かを堪えるように、きつく目を瞑る。




───ねえ、朗


今、どこにいる?

何をしてる?


わたしが傍にいないこと、ちゃんと気が付いているのかな。


あんなに海に行きたがってたのに。

ずっとふたりで進んできたのに。


あと少しで、きみが見たかった綺麗な海が見れたのに。


ねえ、誰のためにここまで来たと思ってるの。

何のためにここまで来たと思ってるの。


むかつくけれど、それが全部きみのためって、きみはちゃんとわかってるの。



早く戻って来てよ。

きみがいなきゃ、いつまで経っても着かないよ。



ねえ、朗。


わたしはここにいるのに。



なんできみは、ここにいないの。