少年はころころと笑い、わたしに向かい手を伸ばす。
わたしは体中の痛みに悶えながら、伸ばされたその手を掴んだ。
蒸し暑い空気とは対照的に、驚くほど冷たい手だった。
「ありが……」
とうございます、と続けようとして、気付いた。
そんなこと、たぶん、言っている場合じゃないし、こいつは言うべき相手でもない。
だって───
「……どうかしたか?」
少年は立ち上がったわたしを見つめ、こてんと首を傾げる。
わたしは、自分をそっと見下ろす彼の瞳を、黙って見据えて。
と、言うより、精一杯睨みつけて。
それに少年が、気が付いているかは別としてだけど。
だってこいつ、今。
わたしに向かって、落ちてきたんだから。