言葉を失くすわたしの前で、警察官たちは何やら話を交わしていた。
だけどそれは、わたしの耳には入ってこない。
頭の中も、もう、何も考えられなくて。
ただ、自分の心臓の鼓動だけが、やけに大きく耳に響いていた。
警察官のひとりが再びこちらを振り向いて、朗に向かい手を伸ばした。
反射的に、その手から庇うように朗を抱き締めると、警察官はぴたりと手を止め、わたしを見遣る。
「心配しないで。病院に連れていくんだよ。このままじゃ危ないらしいから」
宥めるようなその声に、わたしはじっと彼を見つめていたけれど、動かない朗に目を遣り、ゆるりと力を緩めた。
朗の小さな頭が、わたしの胸元をずるりと滑る。
その体を支えるように警察官が肩を掴み、力の無い体をそっと持ち上げた。
離れていく朗の冷たい体。
わたしは唇を強く噛み締めながら、その姿を見つめていた。