「朗、起きてよ、ねえ……」


全身の熱で温めるように、冷え切った体を抱き締めた。

昨日の夜と同じように、動かない体を、何度も何度も両手で擦った。


だけど瞳は開かなくて、薄い唇はわたしの名前を呼ぶことも、わたしに向かって柔らかく笑いかけることもない。


ここにいるのに、手の届かないところへ行ってしまったみたいに。


溢れそうになる涙を必死でこらえて、それでも彼の胸元に、ひとつ滴が落ちる。



「……どうしたらいいの」


あと少しなのに。

朗が行きたかった海は、すぐそこにあるのに。

太陽は待つことなく沈んで。


わたしたちは、進めない。



「朗……!」


なんでもいいから目を覚まして。

くだらないこと言っていいから、わたしを怒らせてもいいから。


わたしの名前を呼んで。


のん気に涼しげに、笑って見せてよ───