「もうちょっとこっちに来て」
ゆっくりと近付くと、少年はもう一度手でわたしを招いた。
そして真下に来たところで、よくできたとでも言いたげに、にこりと笑いかけて。
「じゃあ、ちゃんと受け止めろよ」
は、と言う間もなかった。
突然視界が暗くなったかと思えば。
途端、全身に強い衝撃が走る。
「っぶ!!」
───顔面に何かがぶつかり、その勢いで、後ろに倒れて腰と背中を強打した。
それだけは、わかっていた。
「……大丈夫か?」
一瞬心臓が止まりかけたわたしの上から、そんな声が降りかかる。
ちょっと危ないくらい痛む背中を押さえながら顔を上げると、わたしを覗きながら笑う少年の姿があった。
「ありがとうな、助かった」