深く息を吸って、額の汗を軽く拭った。
そこで、なんとなく涼しくなってきたことに気付く。
相変わらずじめっとした生温さは消えないけれど、それでもさっきまでに比べて吹く風が少しだけ爽やかになってきたみたいだ。
「朗、今何時?」
問い掛けると、朗がわたしのスカートのポケットから携帯を取り出す。
「16時23分」
「うそ、もうそんな時間?」
まだ日が高いから、もうちょっと早い時間だと思っていたのに、いつの間にそんな時間になってしまっていたんだろう。
このままだと、海に着く頃にはもう日が暮れているかもしれない。
できることなら昼間の青い海を見せてあげたかったけれど、今回は夜の海になってしまいそうだ。
夜の海も、きっと夢みたいに綺麗だけれど。