後ろから低いエンジン音が聞こえたから、ハンドルを切って道の脇に避けた。

しばらくすると、軽トラックが横を通り過ぎていった。


車にしてはゆっくりと進んでいるようだったけれど、それでもあっという間にわたしたちを追い越していくし、あっという間に見えなくなる。

きっと、わたしたちが必死に進んできた道も、意識する間もなく通り過ぎてきたのだろう。


こんな距離、なんてことない。

遠い場所へは早く着くし、景色は知らずに流れていく。

だってこんなのただの道、どこへだって続く道。

誰にだって、なんの変哲もない、目的地に行くためだけの、通り過ぎるだけの場所。



「ずっと見てたんだ。小さい頃から何度も。住んでる街から海までの道。それがちゃんと、繋がってるんだってこと」


朗がのんびりとした声で、空に響くように呟いた。

わたしは自分が通る道の先を見つめる。


赤い線の上、海へ続く道だ。