朗は、冬の日の晴れた空のように柔らかく微笑んだ。
少し大きな冷たい手は、零れてしまわないようにと、わたしの小さな手を強く握る。
心臓が、どくんどくんと高く波打つ。
近くで鳴く蝉の声すら聞こえないほどに、大きく、何度も。
耳元で、鳴っているみたいに。
「ば、ばかじゃん、朗……」
瞬きすらできなくて、ただ朗の瞳を見つめていた。
なんだかうまく喋れない。
言葉の発し方を忘れてしまったみたいだ。
「愛してやる、なんて……意味わかって言ってんの」
そんなこと、やろうと思って出来るものじゃない。
理屈なんかじゃなく、気持ちの問題なんだから。
口で言うほど簡単なことじゃないし、口で言ったって、出来ることじゃない。
だってわたしは、それができないから、消えてしまおうと決めたのに。