わたしがこれから何をするかわかっていて、それでも去ろうとしないのなら、もうそれでいい。
わたしも構うことはしないから、そこで勝手に見ていればいい。
わたしがここから、ゆっくりと、空の果てとは反対側へ、消えていくところを。
足を踏み出そうとするわたしを、少年は、どんな気持ちで見ていたのか。
そんなことはわからない。
わかる術もない。
わかろうとも思わない。
ただ、少年は、わたしの背に向かって、こう言ったんだ。
「なあ、お願いがあるんだけど」
死のうとする人間を目の前にしても、相変わらず涼しげで、柔らかな口調。
止めてはだめだ、そう思っても、わたしの足は自然と止まってしまう。
そして振り向くと、わたしを見つめる瞳と出会う。
「今ここで死んだつもりで、少しの間だけ、お前の命、俺にくれない?」