ドクンと心臓が鳴るのと一緒に、顔を上げた。
朗が、変わらない綺麗な顔で、でもとても柔らかく、笑っていた。
「あ、図星」
いつか聞いたような言葉を吐いて、わたしの頭に手を乗せる。
ごしごしと撫でる手つきは乱暴で、だけど不思議と心地良くて。
「夏海」
体が、朗の腕の中に包まれた。
昨日の夜、わたしが朗にそうしていたみたいに、今度は朗が、わたしの頭を抱き寄せる。
「お前は誰かに、愛されたかっただけなんだな」
耳元で、わたしにしか聞こえない声で、風の音みたいに囁く。
長い黒髪が、わたしの頬に掛かる。
その髪を伝うように、そっと、温い雫が落ちた。
それが何か、束の間わからなくて、だけど、そうかと、思い出して。
ああ、もう、変なの。
わたしが自分じゃ流せないものを、朗は簡単に、流させてしまえるんだ。