渇いた瞳からは、もう何も零れることはない。

泣いてしまえば楽なのに、そう思いながら、だけどやっぱり涙は出ない。


静けさが、痛いくらいに耳に響く。



「じゃあ、なんで」


相変わらずの涼しげな声だった。

つられるように振り向くと、朗が、真っ直ぐにわたしを見つめていた。


「なんでお前は、その電話を持ってきた?」



息を呑んだ。


その問い掛けに、わたしは何も答えることができない。

目を伏せ、微かに汗ばむ掌を見つめる。


「……」


なんで、携帯を持ってきたのか。

その答えは、自分でもわからない。

いや、わからないわけじゃない。

もしかしたら、ただ、考えないようにしていただけなのかもしれない。

だって……



「本当は、捨てたくなかったんだろ。お前が想う、大切な人との、繋がり」