人を愛したかった。
必要とされたかった。
誰かのための、自分になりたかった。
誰かに、愛してほしかった。
なのに、いつかそれが目の前から消えてしまうのが怖くて。
見つめようとするたびに、あの日の母の背中が思い出されて。
叫んでも叫んでも届かない声があることを知っていて。
またそれを、知ってしまうのが、どんなことよりも恐ろしくて。
いつだって、自分から人を求めることができなかった。
誰かを愛したくて、誰かに愛してほしくて。
そんなことを、ずっと欲していたくせに。
わたしはいつだって、たったひとりでそこにいた。
友達はいた。
決して多くはないけれど、一緒に居てそれなりに楽しいと思える友達だ。
だけど、彼女たちに対しても、いつもどこか距離を置いている自分がいて。
そんな自分が嫌で、だけど、その自分を脱ぎ捨てることもできなくて。
きっと一生、わたしはひとりきりなんだろうって、そう思っていた。
だけど、そんなわたしの前に、突然現れた、その人は。
ずかずかと、だけど陽だまりのように優しく、わたしの中に入って来たんだ。



