───ピリリリ
突然、スカートのポケットから、静かな空間に無機質な音が響き渡った。
それが何の音か、わからないわけもなくて。
ポケットから取り出すと、遮るものがなくなったせいか、それはさらに大きな音を響かせた。
チカチカと着信を知らせるランプを灯らせ、わたしを呼ぶように鳴り続ける、携帯。
「……っ」
───ドクンと、心臓が大きな音を立てて、胸の奥で弾んだ。
喉が急に乾いた気がした。
息の吐き出し方がわからなくなった。
携帯を持つ指先が震えた。
だけどそれを気にしている余裕なんて、あるはずもなかった。
ディスプレイに表示されたみっつの文字。
光り続けるその名前。
それが、わたしの目を、意識を、全てを、引きつけて、離さない。
頭が痛い。
何も聞こえない。
心臓の音だけが、やけに大きく、こだまする。



