大きな鳥居をくぐった先には、短い参道と、小さな境内がぽつんとあるのみだった。
小綺麗にはしてあるけれど、どうやら無人の神社みたいだ。
「あそこの階段に座らせてもらおう」
朗が境内の正面を指差す。
わたしたちは一応、境内に向かって一礼してから、その階段に腰掛けた。
とても静かな場所だった。
真上には、緑で縁どられた青い空。
四方を木々に囲まれているせいだろうか、この場所はなんだか外よりも涼しく穏やかに感じられる。
すぐそこで鳴いているはずの蝉の声も、どこか遠くに聞こえて。
なのにやけに、風の音だけ強く響いて、まるですぐ傍で鳴っているようで。
陽の光も遠くて、だけど温かく心地よくて。
なんだか、ここだけが別の世界みたいだって、そんなことを、思えて。
そう、あの鳥居をくぐった瞬間から、今までとは違うまったく別の世界に来てしまったんじゃないかって。
そんな馬鹿みたいなことすら、考えてしまうくらいに。
……もしも本当に、それが馬鹿みたいな妄想じゃなくて、現実だったのなら、なんて、そんなことすら、考えてしまうくらいに。