よく見ると、青々と茂る緑の隙間から真っ赤なものが覗いている。

近づくにつれ、それが鳥居だということに気が付いた。

どうやらそこは小さな神社のようだった。



神社の横には田んぼを巡る用水路があり、わたしたちが通って来た道から鳥居までは、その用水路を跨ぐ小さな橋で結ばれていた。


橋の手前に自転車を止め、目の前に現れた古びた鳥居を仰ぐ。

青と白、そして緑に囲まれた景色の中に、突如現れる異質な赤。

だけどそれは、自然とこの静かな空間に溶け込んでいる。



「ねえ、朗」


振り返ると、朗もわたしと同じように鳥居を見上げていた。

黒い髪が風に揺れて、その上を、落ちた葉っぱが泳いでいく。

木の葉の擦れ合う音がする。

朗の瞳が、ゆっくりとわたしに向いた。


「丁度いいし、ここで休ませてもらおっか」


返事は、小さな頷きだった。

わたしたちは自転車から降りて、木の葉のアーチの下にある橋を渡った。