───手前を田んぼ、そしてその向こうを山脈に挟まれたまっすぐに続く田舎道。
脇を走る線路は、ずっと前に一度、2両編成の電車が通ったきりだ。
所々に点在する民家以外には、大きな建物もない。
日はもうすぐ昇りきろうという今、布団の中でゆっくりと寝て回復しつつあったわたしの体力は、再び限界を迎えていた。
「……朗、ちょっとどっかで休みたいんだけど」
「ああ、おにぎりタイムだな。ちょっと待て、どこかにいい場所は……」
ペダルを踏むことすら無意識になっているわたしの代わりに、朗がきょろきょろとあたりを見回す。
そして何かを見つけたのか、嬉しそうに「あ」と声を上げた。
「あそこ、なんかあるぞ」
「死体じゃないだろうね」
「違う。ほら見ろ、木が生えてるだろう」
のそりと、アスファルトばかりを見ていた顔を上げる。
すると確かに、少し先の道の脇に、田んぼばかりの中、そこだけ木々が生い茂る場所があった。