かさかさと、広げた地図を畳む音とともに、背中越しに聞こえた、朗の涼しげな声。
それに一瞬聞き返しかけたのは、その言葉が、わたしの呟きに対する返事に思えなかったからだ。
それがなぜだかは、よくわからないけれど。
道路を見つめていた顔を、少しだけ上げてみる。
「……そうだね」
いつかは終わる。
進んでいないように思えても、確かにわたしたちは海へと近づいていて。
永遠に続くように思えるこの瞬間は、いつか必ず終わりを迎える。
長くても、遠くても。
いつかは必ず、終わるんだ。
「終わらないものなんて、ないんだ」
誰に向かって言ったのか。
何を思って、言ったのか。
確かめるように、もしくは刻み込むように、朗はもう一度呟いた。
わたしはもう、叫んで何かを言い返すことをせずに、黙ってその穏やかで、遠い声を聞いていた。