「わ、わたしは……」


自分のものとは思えないような声が、確かにわたしの喉の震わせながら、言葉になる。

心臓の動きに合わせて速くなる呼吸が、その隙間から空気を出した。



少年は涼しげな表情で、自分を見上げるわたしを見つめている。


遠くから、野球ボールが飛ぶキインという爽快な音が聞こえた。



「……止めないでください。決めたんだから」


震える唇の隙間から零れた言葉。

何も言うな、そんな気持ちを込めて、精一杯、少年を睨みつける。



ここまで来て、見ず知らずの赤の他人に邪魔をされたくはない。


決めたんだ、ここで死ぬと。



ここで、わたしは、持っていたすべてのものを捨てて、この世界から、消えるんだ。