また溢れそうになる何かを抑えるように息を吐いた。

そして倒れ込むように、朗の胸に、額を寄せた。


「どうした夏海、腹でも痛いのか」

「そんなわけないじゃん、ばか。朗のばか、あほ」


いまだ着たままの半纏を、ぎゅっと握りしめる。

分厚い布。

その下の、冷たい肌。


ずっと抱き締めていた、眠ってしまっても、その手だけは離さずにいた。

離れないようにと、あったかいようにと。


「……しんじゃうかと思った」


声が震えた。

耐えきれなかった滴が、ひとつだけぽつりと、染みをつくった。


「……ああ、そっか、そうだな、ごめんな」


ようやく思い出したように、朗が呟く。

冷たい掌が、わたしの頭に触れた。


「ありがとう、夏海」