唇が小さく動いた。
同時に瞼が閉じて、長い睫だけが微かに揺れた。
色を失くした肌は、雪のように冷たいままだ。
「寒いの? 寒いんだね」
もう返事は聞こえない。
だけどそれを待つ間もなく、肌蹴ていたタオルケットと毛布を掴んで朗の体に被せた。
両腕で頭と体を抱え、背中を何度も何度もさすった。
「朗、あったかい? ねえ、朗」
寝ているだけで汗ばむような熱帯夜。
全身がべたついて、芯から熱を帯びて熱い。
なのに朗の唇は、まるで血が通っていないような色をして、いつまでも細かく震えていて。
なんでなんだろう。
こんなの絶対に普通じゃない。
朗に一体、なにが起きているんだろう。
「朗……!!」
不安に押しつぶされそうで。
それを堪えるように、朗の小さな頭をぎゅっと抱きしめた。
「……なつ、み」