この暑いなか、分厚い半纏を着こんだまま寝ているというのに。

それなのにこんなに震えて、掴んだ手は、ひどく冷たい。



「朗? どうしたの。ねえ、大丈夫?」


朗の顔に掛かる髪を掻きあげて呼びかけた。

けれど朗はわたしの声には答えずに、うわ言のようにわたしの名前を呼び続ける。


「朗、ねえ、聞こえる?」

「……夏海」

「なに? わたしはここにいるから。ねえ、朗」

「……」


細い腕が、ずるりと背中から外れる。

代わりにわたしが朗の背中を抱きとめた。

細かく震えた軽い体は、驚くほどに冷え切っている。

まるで人形みたいに、生きている心地が、しないくらいに。



「なつ、み……」


薄い唇が、震えながら、わたしを呼ぶ。

どうしたの、もう一度声を掛けると、うっすらと開いた瞳が、わたしを捉えた。



「……寒い」