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「実結?顔色悪くない?」
何も考えないで歩いている私に、突然佐喜子が顔を覗かせて私の前に現れた。
「ああ、おはよう」
そう言えば駅で声を掛けられるんだったな、そう思いながら返事をする。突然顔を出したところで驚くこともない。
何も反応しない私に余計に心配そうな顔をした佐喜子になんだかおかしく思えた。
「どーしたの?さっきから声かけてたのに気づかないし」
「や、眠いだけ」
私の返事に「ならいいけどー」と小さく呟いて佐喜子が私の隣を歩いた。
何を話して良いのかわからなくて黙ったままの私にあわせるように、佐喜子も何も言わなかった。
いつもどうやって話していたんだっけ?
それすらも分からない。
世間話ですらなにをいえば良いのかわからない。
無言で歩く私と佐喜子の間には、すこしいつもと違った空気が流れている。
「雨、止まないね」
いつの間にか口から発せられた言葉は、そのまま雨に流された。
今日をどうやって過ごせばいいのか、分からないままただ同じ時間が過ぎる。
こうやって同じように過ごしていけば…いつか抜け出せるのかな?