「今日はデート?」
もう見えなくなった修弥の後ろ姿を未だ見ていた私の背後から佐喜子(さきこ)の声が聞こえてゆっくり振り返った。
「暇らしいからね」
「もー…意地っ張りね、あんたも」
私の言葉に苦笑いする佐喜子に私もつられて笑った。笑わないとやっていけないじゃない。
「中学からの噂のカップルなんだから仲よくしなさいよー」
中学からの友達の佐喜子はそういって明るい色の長い髪をくるくるといじりながらクスクス笑う。
あんな付き合い方をした私たち。そりゃ学校内でも有名だったけど――…そんなの邪魔なだけだ。
一年経ったのも忘れていたあいつには、もうすぐ二年になるのもきっとどうでもいいことだろう。
現にそんな話なんてしたこともないし。
何もなくこうやって毎日だらだらと続いてきたんだから。
かろうじてクリスマスと誕生日だけは――…映画デートはしたけれど。
自分で思ってもばからしく感じる。
「時間の問題かもね」
そう小さく呟いた。
「——噂、気にしてるの?」
私の言葉に笑うのをやめた佐喜子がのぞき込むように近づいて小さく聞く。