私はもう見なくても済む。


あんな光景を。



もう味わうこともない。


あんな、痛みを。




「休みたい…」

どこにも行かずに、ただ、家の中で祈る方がよっぽどマシだ。


「何言ってるの。熱ないんだから」

私の言葉に母が呆れ気味にそう言ってそのままキッチンへと背を向けた。

母の返事に反応することも出来なくて、そのまま座ったまま、ただカレーを眺めていた。何も出来なかった。

動くと時間が過ぎていってしまいそうな感覚。

何もしなくても過ぎていることは分かっているのに、それでも動きたくなかった。



考えることすらしたくない。


「実結、いつまでそうしているの。早く学校行きなさい」

母の声が、無理矢理私を動かすまでただ座っていた。