高3になってもあたしとサトは電話で変わらず話をしていた。


その日も朝方までサトと話をしていて、あたしは寝坊してしまった。

もう登校時間はとっくに過ぎていて、地下鉄の中はガランとしていた。

あたしが大きなアクビをすると

「口の中丸見え」

と声がした。見るとサトが笑っていた。

学校も含めて、サトが電話以外であたしに話かけてくるのは初めてだ。

「おはよ・・・」

あたしはドキマギして不自然な笑顔になった。

サトはあたしの隣に座ると「おはよってさっきまで話てたじゃん」と言った。

「そうだけど・・・」

何か緊張するんだけど!!

「電話以外で話すの初めてだね」

何か会話をしないととあたしは焦って言った。

「そうだっけ?あー、そうかもね」

足をパタパタ動かしてサトは言った。

「だって、内緒ってサト言ったじゃん」

「言ってないよ。シーってやっただけ」

指を口の前に当てた。

(それって内緒って合図じゃん!)

あたしは見る見る赤くなった。

「赤くなった。照れてる?」

ちょっと意地悪な笑顔だ。

「なってない!!」


しばらく沈黙があった。

「遅刻だねー」

サトがのんびり言う。

「そうだね」

「うーちんさ、ウチの高校に来て屋上上がった事ある?」

全く予想しない会話にあたしは首を傾げた。

「ないけど。だって屋上って上がれないんでしょ?禁止って・・・」

「屋上で遊ぼうか」

サトが言ったと同時に地下鉄は学校のがある停留所に止まった。