高校生になって、あたしは男子バスケ部のマネージャーになった。

クラスで仲良くなった子と「ちょっと憧れるよね、マネージャー」と盛り上がって入部した。

部活の先輩や同級生とも楽しくやっている。

バスケ部に問題はない。
ただ、何故かバスケ部の先輩の親友だというサッカー部の先輩に入部当初からものすごい勢いで「付き合ってくれ」と言われている。
あたしは全く好みではない先輩。


「おー、うらら」

帰り道、1人で街中を歩いていると、反対側からヒロが歩いてきた。
あたしとヒロの高校はわりと近い。
近いと言っても、この街自体が小さな街だけど。

「あー、ヒロか・・・。何してんの?こんな時間に」

あたしは時計を見た。もう7時を過ぎている。

「友達ん家の帰り。腹減ったんだけど、メシ食わねー?」

あたし達はちょっとオシャレな喫茶店に入った。
今でいうカフェみたいなものかもしれない。


席に案内されて、あたしはメニューを開いて「どれにしようかなー」と言った。
ヒロは見る事なくさっさと決めているらしい。

「部活帰り?」

タバコに火を点けながらヒロが言った。

「うん」

あたしは店員を呼んで、2人分の注文を言うとカバンの中からタバコを出した。
あたしは高校生になってからタバコを吸うようになっていた。

「市内で3本の指に入る『可愛い子が多い高校』の制服を着た高1の女子がタバコくわえてる姿はどうよって感じだな」

「うちの高校、女子の喫煙率高いよー。男子が悲しむね」

「泣くなー。特にサッカー部の先輩だっけ?号泣だな」

ヒロは笑いながら言う。そんなヒロをあたしはちょっと睨んだ。

「だからさ、迷惑してるんだって。何であたしなんだよ!って不思議」

「なーんか、噂になってるぞ。うららが高校に入ったらすっげー可愛くなったらしいって」

「えー、知らないよ。でも、あたし可愛くなったかな?」

ヒロはあたしをマジマジと見てから「いや、オレは変わらんと思う」と言った。

「ほら、そんなもんだよ。あたしモテないもん」

あたしは笑った。