「・・・と、いう訳で、あたしは新聞の記事を書く係なんだよね」

ヒロにざっと説明すると、ヒロは面倒そうな顔をして「頑張れ」とその場から去ろうとした。

「ヒロ、あんたもヒマでしょ?手伝わない?」

あたしは満面の笑み。

「絶対無理!バカ!オレ忙しいんだよ。ライブやるんだって12月に」

「冗談だよ」

あたしは笑いながら言った。

「お前1人で壁新聞?だっけ、作るのか?」

「いや、だからあたしは記事だって。書く人決まってるじゃん」

うちのクラスには飛び抜けて美術の才能がある男子生徒がいる。
生徒平等主義の佐藤ですら高い評価を上げている。
壁新聞はあたしも含め4人で作るのだが、彼以外の3人は記事を書くだけ。
本番の紙にはすべて彼がデザインから何から書く事になっている。

その彼は今、佐藤がこれまた監修の元、卒業制作でピカソのゲルニカを原寸大で模写するという大役があるので、彼は本番まで登場は一切しないわけだ。

「ふーん。まぁ、適当に頑張れよ。後、明日ビールちゃんよろしくね」

「えー、またぁ?最近あたしばっかりじゃん。西はどうしたのさー」

あたしがブーブー言うと「西も忙しいんだよ」と言った。

「あいつのどこが忙しいのさ。あたし達の中で一番ヒマでしょうが」

「彼女出来たみたいだぞー。隣の中学だってさ」

ニヤニヤとヒロが笑う。

「マジ!?」

あたしもつられてニヤニヤしてしまった。

「明日、西にも来てもらわないとー」

あたしが甘えた感じで言うと「そうよねー」ヒロも同じ口調で言った。

あたし達2人がケタケタと笑っていると・・・

「あの・・・!」

と可愛らしい声が聞こえて2人で振り返った。