お正月。ヒロから年賀状が来た。

『え?』

書いてあるのは「HAPPY NEW YEAR」じゃなくて「Merry Christmas」。

これ、プリントごっごで印刷したみたいだから送った人全員にクリスマスって書かれた年賀状が届いている事になる。

あたしはお腹を抱えて笑った。





不思議・・・

お墓を見つめながらあたしは思った。

今までは、ヒロの事を思うと言ってくれた大事な言葉と同時に死んでしまったという辛い現実がくっついていてすごく苦しかった。

でも、心にヒロはずーっとあって思い出しては涙が出そうになっていた。



10年間、ずっとそうだった。

だから嫌だった。



今、お墓の前で思うヒロは楽しかった事、ケンカして悔しかった事。
ちゃんとした「辛い記憶」ではなく、あったかい「記憶」。



10年間、本当に辛くて苦しかったけど、ヒロとの思い出は濃密で凝縮されている。

早くに亡くなったから、駆け足で人生を終えたから?

だからヒロは周りに影響を及ぼすくらいな存在になったのかな。



あたしはお墓に話しかけた。

「ヒロ、また来るから。今度は頻繁にくるから。もう怖くないからね」


周りを見渡した。

ちょっと離れた場所にモリがポツンと座っていた。



「モリとも話すの久々でしょ?待っててね。・・・近いうちにまた会おうね」

お墓をポンポンと軽く叩いてあたしは笑った。



「じゃぁね。またね」

モリの所へ歩いて行く途中、ちょっとだけど涙が流れた。