スタジオ。

「あの、あたしまだ譜面見ないと全然出来ないから」

あたしはよへいにアンプの付け方の説明されながら言った。


「わかってるよ。そんなに緊張しなくても大丈夫」

みんな笑顔で言ってくれた。


いざ、音だし。


(よへい・・・ギター上手すぎ!!)

よへいのギターに圧倒されて、あたしはベースをぶら下げたままだった。

「うらら、音!」

「あ、はいはい」

でも・・・

(えーと、今皆さんはドコを弾いているのかしら?)




何度かスタジオには入ったけど、その頃にはあたしとユッコちゃんはもう別々の会社で働いていて、あたしの仕事は半端なく忙しくなり、スタジオへはなかなか行けなくなった。

でも、家では恋人と一緒にベースの練習をしてた。

なかなか集まれないうちに、みんなそれぞれ用事が出来てしまって、あたし達のバンドは自然消滅になってしまった。





今でも、思う。



あたしはなぜベースを弾きたかったんだろう?



恋人のギターと並んでスタンドに立てかけてあるベースを見ながら、あたしは下手くそながら、たまにベースを弾いてみたくなる。