「何でかなー?てか、指痛いんですよね?腫れてますよ」

缶チューハイを飲みながら自分の指を見た。



『うららさん、楽器を弾くので爪は切って下さいね』

アキちゃんが言った。はい、ちゃんと長かった爪、切りました。


『ピアノやってたなら譜面読めるよな?』

よへいの言葉。はい、ちゃんと読めてます。ベースとメロだけは。


『楽しみー』

ユッコちゃんの笑顔。うん、頑張るよ。



「はぁー」

ため息をついて缶チューハイを置くと、自分の周辺に気づく。


くわえタバコで酒飲んで、譜面いっぱい広げて悶絶するあたしって・・・。


15歳の時のヒロ、そのまんま。



ヒロも毎日こんな気持ちだったのかなー。

指いてーって思ってたのかな?

リズム合わないよーって思ってた?



ソファーに寄りかかって、3本目のチューハイを開けると空きっ腹には結構きくな。


「へへへへ」

あたしが意味もなく笑っていると、


「何してんの?女の子が1人酒ですかー?」

と頭の上から恋人の声がした。


「待ってた!!おかえりー!!」

あたしは恋人にガバっと抱きついた。