「何か、今揉めてたでしょ?だから声かけられなかったんだ」

チイの腕にはゴツイブレスレットがはまっている。
そのブレスには血がこびりついていた。

「チイ?そのブレスって・・・」

「これ?ヒロが死んだ時付けてたやつ。焼かないでもらって、チイが代わりにしてるの。ヒロ、もう腕に付けれないからね」

終始笑っているチイに違和感を覚えた。

(この子、ちょっとおかしくなってる)

「あ、挨拶しないといけないんだ。また後でね!」

チイは笑顔であたしに手を振った。



「あの子、骨拾う時泣き叫んですごかったんだって」


あたしにお茶を渡してきたのは、西ではなくヨシコだった。

「西に頼まれた」そう言って、あたしの隣に座るとタバコに火をつけた。


「何か、様子が変だったて思った。そうだったんだ・・・」

あたしの言葉に「うららもおかしくなってると思うよ」と言われた。


「え?あたし?どうして?」


「だって、泣かないじゃん。うららの性格ならヒロが死んだってなったら、ヒロの彼女に負けないくらいに泣き叫ぶと思った」


あたしは渡されたお茶を一口飲んだ。

「嫌なの。多分、ヒロの遺体を見てないから実感が沸かないのもあるんだけど、何かこの場がウソっぽくて・・・、現実じゃない気がするんだよね」


ヨシコはあたしをしばらく見てから言った。

「うららは、みんながいる所じゃなくて、1人で座った方がいいと思う。みんなと違ってヒロへの気持ちすっごく強いから。静かにヒロを見送ってあげなよ」


ヨシコは立ち上がって、あたしの肩に手を置いた。

「泣き叫んでもいいんだよ。ここはヒロを見送る場所なんだから。嫌だって叫んでも誰も責めたりしないよ」


あたしは泣き叫ぶんだろうか?

でも実感が沸かないんだ。心が一瞬で凍りついた感じなの。

リアルはここにない。