洗面所で鏡を見ると、思ったよりも濡れてはいなかったが、着ていたパーカーがコーヒーの色に一部染まってしまっていた。

 水で濡らしてパーカーも拭くと、私は顔を洗ってハンカチでふき取った。


 席に戻ると、小浜はグッタリとうなだれて、
「ごめん・・・」
と力なく言った。

 私は、なるべく平気な声で、
「大丈夫でしたよ、そんな汚れてないし。まぁ、正直驚いたけどね」
とやさしく言った。

「ごめん・・・」
小浜は顔を上げてこっちを覗き見るように見ると、再びうなだれてしまった。

 これでは話が進まないじゃないか。

「なんで噴き出したんですか?そんなおもしろいこと言ったかな私」

「だって・・・付き合ってる、なんて言うから」

「え?違うの?」
今度はこちらが驚く番だ。敬語を使うことさえ忘れてしまっている。