「帰ろう」
そう思って、私は改札に向かおうとした。ちょうど反対側の電車が到着したらしく、人の波に流されるようにして歩き出す。

 改札を通ってターミナルの方に歩き出した私は、そこに信じられないものを見た。

 目の前のトイレから、小浜が歩いて出てきたのだ。

「小浜さんっ」
思わず大声で叫んでしまう。まるで、叫ばないと消えてなくなってしまうかのように。

 小浜は、ギョッとしてこちらを見た後、
「あれ?カナちゃん」
と、こちらのあせりも知らずにのんびりした口調で笑顔になった。

 人のジャマにならないよう通路の端っこへ歩いてゆき、私は小浜の前に立った。

「同じ電車だったのかな?僕も今改札でてトイレ行ったとこ」
小浜はなぜかうれしそうに話した。

「え?反対方向じゃない?」

「大学は休みだからねぇ」

やっぱり休みだったんだ!?

「でも」小浜は続けて話す。
「今日はバイトでさ、今帰ってきたとこ」