「昨日のFM聴いた?」

 朝会うなり、涼子が尋ねてきた。
 
 いつもと同じホーム、いつもと同じ朝。


「うん。いつものように恋愛コーナーだけ聴いてから寝たよ」
吐く息が白く、生まれたそばから宙にとけてゆく。

 涼子とは月曜日から土曜日までやっているFMの恋愛コーナーについてよく話す。2人ともDJアオイが好きで、その中でも特に恋愛コーナーはお気に入りだ。アオイのアドバイスについて、あーでもないこーでもないとお互いの意見を言うのが恒例だ。

「中学生のときってああいうかんじよね。なんかなつかしくなっちゃった」
涼子が寒そうに肩をすぼめながら言った。

「私なんだか分かるなー、あの気持ち」

「へー、そうなんだ?」

「うん」私は深くうなずくと、
「だって、井上先生とも春にはお別れでしょ。やっぱコクっちゃったほうがいいような気がしてるもん」
と神妙な顔をしてみせた。