私は携帯を取り出し、菜穂にメールをうつ。携帯はいまやクラスの半数以上が持っている。パケットも定額制になったりと、気兼ねなく使えるのがうれしい。

『やほ。宿題やってる?なんだかめんどくさくなっちゃった。大体、家に帰ってまで宿題やらなきゃいけないなんて、ほんと学生はツライね』


 しばらく待ったが、菜穂からの返信はなかった。きっと、ご飯でも食べているのだろう。


 玄関のカギを開ける音がし、母親が帰ってきたようだ。なにやら恵美と楽しそうに話しているのが聞こえてきた。

 猛ダッシュで宿題を片付けると、私はリビングへ降りて行った。

 私が降りた気配に気づいた母が振り返る。

「カナ、見てよこれ。お姉ちゃんが作ってくれたのよ」

 母の指差す先には、先ほど教えた餃子が並んでいた。恵美を見ると、はた目で見ても分かるくらいあせっているのが笑える。私は何食わぬ顔で覗き込んで、
「へぇ~、やるじゃん」
と驚いてみせた。